歩くときのバランスが不安な人が使う杖(つえ)。
杖があってもフラフラが強い人を発見すると、
目で追い、
気配を控えめにしつつ、
迫り来る危機にはシュバッと支える。
そんな通りすがりの紳士モードでスタンバイしちゃうんだけど、みんなはどうだろうか。
そして、杖ユーザーから時々聞こえる、
「カチ、カチ…」
歩行に合わせて鳴っているようだ。
うるさいなぁ、と思う前に、ちょっと確かめてほしいんだ。
最近の杖は長さが調整できる
まずは杖そのものの解説。
昔の杖は長いものを買ってきて、ちょうどいい長さにカットして使うものだったが、
杖ユーザーが増えてきたのに伴い、長さを調整できるものが主流になってきた。
切って適正な長さにするタイプは、
短く切りすぎると長くできないので、
自分に適した長さがまだ分からないという杖初心者に優しい設計だ。
ラチェット式(ベルトみたいに穴に合わせて長さ調整)
特に、主流として出回っているのは
ラチェット式。
ベルトの穴みたいに、穴の位置に合わせて長さを調整できる。
長さ合わせの際、パチ、パチ(穴に合わせている音)…というのが特徴。
無段階(ミリ単位で長さを調整)
無段階式もあるが、こちらは普通に歩く用途の杖としては少数派。
ノルディックウォーク用の杖だと、無段階式が多い。
…というのも、
ノルディックウォークは手軽にできる系スポーツの一種。
長距離を高速歩行する性質上、
プレーヤーが地面の傾斜や自分の疲労具合に合わせて歩行スタイルを変える。
スタイル変更に柔軟に対応するため、無段階調整式が多く採用されている。
カチカチ音はどこから聞こえる?
本題に戻って、カチカチ音。
どこから聞こえるのかお待ちかねのおともだちも居ることだろう。
カチカチ音の発生源1:杖の接地面についているゴムを見よ!
カチカチ音が、地面から聞こえる場合。
杖を上下ひっくり返して観察してほしい。
金属出てるんですけど?という状態なら、音源はソレだ。
市販の杖の大半は、金属製。(ほぼアルミ)
滑らないように、杖の先にゴムを付けているものの、
杖は体重をかけて使用する。
ゴムに金属をさしてたら、ゴム側に防御が無いと穴が開くだろう?
この防御目的に、杖装着用のゴムの中には、金属板が入っている。
歩行とともにゴムが摩耗してくると、この金属が出てきてしまって、
カチ、カチ、と音を鳴らしてしまうという仕組みだ。
車に例えると、タイヤの溝が減ってる状態。
対策は簡単。
杖先ゴムを交換すること。
杖先ゴムは単一サイズではないので、ショップがあったら見てもらうといい。
カチカチ音の発生源2:ラチェット(穴にパチパチ式)の留めフレームを見よ!
もうひとつの発生源も紹介しよう。
ラチェット式の杖は、継ぎ目を留めている輪状のパーツを見てほしい。
パチパチ合わせる穴が数個、上から下へと開いているが、
途中で1つ、輪みたいなパーツがついている。
これが締まっていないと音がする。
そもそも、ラチェット式は長さを調整しやすい長所がある一方、
必然的にパーツが多くなっている。
金属製のパーツをなめらかに動かすには、構造上、どうしても隙間が必要なんだ。
これが動くことでカチカチ音がする。
でも、動かなくていいときには隙間はいらないので、
ラチェット式の杖には締めて固定するパーツがついている。
このパーツ、自分で長さ調整しても、
最後に締め忘れちゃうユーザーが多い…
クルクル締めて静音にしてあげたキミはきっとヒーローだ。
音が鳴りやまない!そんなときは
ラチェット式特有の症状として、内部パーツの摩耗があげられる。
そもそも、ラチェット式は杖が伸縮性をもつので、
下半分のパーツ(接地側)の上部にプラスチックパーツがついている。
このプラスチックパーツは、
中側パーツ(下半分)と外側パーツ(上半分)が直接ぶつからないように付けられているのだが、歩行距離や力のかけ具合、伸縮頻度によって、パーツが摩耗・欠損してしまうことがある。
そうか、このプラスチックパーツを変えればいいんだね!と思ったおともだちへ。
このプラスチックパーツ(C型環)は、容易に手に入らない。
そもそも市販を前提としたパーツではないということだ。
また、プラスチックパーツ(C型環)が欠損するほどの状態は、
杖そのものが相当使い込まれていることを示す。
杖の軸が歪んでいたり、サビが進行していることもあるので、
杖に頼って、全力で体重をかけちゃうユーザーの場合、
気持ちを切り替えて買い替えをオススメする。
ボロボロになるまでご主人を守ってくれた杖を、ぜひほめてやってほしいんだ。
自分の足でしっかり歩くために
今回は杖ユーザーのカチカチ音をとりあげたが、
今後も自分の足でしっかり歩くためには、とても大切なこと。
ただ、ちょっとバランス悪そうだから杖!のように、
何も考えずに杖を贈ろうそうしよう!と行動しちゃうのではなく、
いろいろ選択できるなかで、杖で歩くのがいちばんいいね!と
確かめるプロセスが重要なんだ。
商品そのものの価格やスペック比較じゃなくて、
そもそも使うのかい?使って便利になるのかい?といった視点は本当に大事。
ここを見ているおともだちは、イロイロ比較できる賢いユーザーだと信じてる。
ちょっとどうしたらいいの!というときは、遠慮なく鶴!と呼んでくれたまえアデュー!